クーロンとは


トイカメラ日和 - 短編

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キンモクセイの香り

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九月。夏の香りを洗い流すように雨が降る。シトシトと、少しずつではあるが着実に、汗ばんだ街の汚れを擦り落とす。日が暮れるのも早くなり、聞こえる鳴き声はセミから鈴虫にすり替わっていた。
心地よい風が、夏の終わりを告げるように頬をなでる。

僕はなんだか無性に物悲しくなってしまい、ため息をもらす。きっと、このため息はあの頃のものとなんら変わっていないのだろう。
比べると、今の僕をとりまく人も仕事も、街の風景もモノの考え方も、もちろん年齢も変わった。もっと詳しく言えば、好きなお酒も、聞いている音楽も、履いているスニーカーも、少しふくよかになった財布も、そして愛している人も。
あの頃とは違う。
ただ、このため息だけが同じ色をしているんだ。

『一度飲み込んだ言葉は、吐き出す場所を選べない。永遠にグルグルと同じ場所を行ったりきたりするだけなんだろう』

いまこの空の下、僕と同じような感情を抱き、ため息をこぼしてる人は何人いるんだろうか? きっと多くはいない。でも、こんなありふれた思い、僕だけが特別ってわけでもないだろう。
たとえそんな想像からでも小さな繋がりがうまれる。僕一人だけではないんだろうって思えば、少し救われる。

『僕は罪という秘密背負って。胸の奥でいつまでも溜め生き、ひとときのため息として吐き出す』


もれたため息は行き場もなく、ただふわふわと部屋を漂っている。
きっと僕は今だに心頼りを探しているんだろう。

『どうせ何も話せないくせに…』

憂鬱が積のる。
僕はせめてこの部屋からそいつらを追い出そうと窓を開けた。
すると部屋中にキンモクセイのかぐわしい香りが広がり、灰色のため息は窓の外、オレンジ色の花と混じって、少しだけよどんだ。


・・・FIN




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昔につくった超短編です☆
★★★★★★☆☆☆☆
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想い出の公園

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想い出は学生んときに、たくさんたくさん作って、
社会人となってからは、少しずつためていく。
そんな感じだろうか。

どんなことでも知りえた友人も、いまとなっちゃ
誰がどこで何の仕事して、どんな恋をしているかも、
あんまり知らない。

時間はあの頃は無駄なくらい、たくさんあったはずなのに、
そこから遠ざかるにつれ、どんどんと貴重になってくる。
かといって、それが充実に繋がってるとは到底思えず。

そして想い出は思い出す間などなく、心の奥の方へ沈められいく。


ここに来るのは久しぶりだ。
授業をさぼって…というか厳密に言うと、
課題を提出できなくて、みんなでボイコットしたんだ。
ん~懐かしい。

突如、時間がゆっくりと流れ出す。

沈められた想い出たちがたくさん顔をだし、
私に心地よい痛みを次々と運んでくる。

私は目を閉じる。
差し込む光が瞼に触れて、想い出を赤く染める。

そこに見つけた。
今を生きている私を。

明日のことなんて考えず、今を命一杯楽しむように、
仲間たちとバカみたいにゲラゲラ笑っていた。

そう。社会に出て成長したと思っていた私は、
体裁を取り繕うことに時間を費やしているだけで、
大切なことを置き去りにしていたんだ。

それは、いま幸せかどうか、ってこと。

教えてくれた。
過去の私と友人たちは。

貴重なのは『時間』ではなく、今この『瞬間』なんだ。


私はそこに見つけた友人に電話をかける。

『あ、久しぶり。元気でやってんの?』
『ほら、あれ覚えてる? 課題出来んで、みんなでボイコットしてさ~』
『そうそうそう、あん時さ~ ・・・』



― きっと。
きっと、「明日からまた頑張ろう」と思っても、
それはイマ感じたことであって、
また明日になればいつものように日常をすすめていくんだろう。

だけど、ここにあった確かな想い出は、私の心の棘をとって、
また少し違った明日を運んでくるのかもしれない。


今はただ、この懐かしい、優しい時間に心をあずけて。




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あーちゃん~その3

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過去の話はこちら


おじいちゃんにはよく虫採りを手伝ってもらった。『コオロギ捕まえたぞ、うおっほん』と咳払いしながら僕に手渡す、優しいおじいちゃん。僕は喜び、両手を広げる。受け取った黒い物体を見る。こおろぎ、というか、これは確かに奴だった。僕の最強最悪の天敵。黒い彗星、ゴッキーだった。衝撃的すぎて反射的にふり払うことさえできなかった。人はあまりに衝撃を受けると、金縛りにあうみたいだ。

そう、あれと同じだ。つい最近偶然にも数年前の芸能ニュースを見たんだけど。義丹と○シアが離婚するかしないかってスキャンダル。記者会見で泣き綴る義丹に、あるキャスターが(恐縮です)が「○シアさんは新しい恋人が出来たみたいですよ」と言った時の感じだ。あの時の義丹な感じだ。まさに僕は絶句したんだ。
関係ないが、絶句義丹(怪獣の名前みたいだ)は会見から去る時に、泣きながら「マーちゃんごめんね」と言っていた。「今度会えるんです」とかも言っていた。だからなんなんだ。いや、むしろ讃えたい。面白すぎるぞ。

それにしても、悪戯の為ならゴキブリを片手掴み、なんてクレイジーなおじいちゃん。でもあれはさすがに笑えなかった。なのにおじいちゃんは大爆笑。僕はそれも含めてどん引きして、絶句義丹になったものである。


おじいちゃんの朝の日課である、「住宅駆け回りマラソン」には何度も参加しようとした。「明日は僕も参加するから起こしてな」って幾度となく言った。でも夜遅くまで、従姉妹に借りた『あさりちゃん』の単行本を読んでいたし、朝が早すぎるし、結局ずっと寝てるのが僕の朝の日課だった。
言うまでもなく、「なんで起こせへんねん!」という僕の怒りは、「起こしたわ!!」で撃沈された。僕はそこでもまた絶句義丹になったのである。


・・・続く


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こんなアホな例えに絶句しないで、この先も読んでほしいw☆

あーちゃん~その2

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1話目はコチラ

駅を下りても、祖父母の家までは15分くらい歩く。だけど、途中で駄菓子を買ったり、昆虫を探したりしながら向かうので苦痛ではなかった。
今では考えられないが、僕は虫採りが大好きだった。それはもう何百匹と採った。そしてその数だけ死なせた。その怨念が今の虫苦手な僕を作り上げたのかもしれない。
虫採りに一番血気盛んな小学生低学年の頃なんて、近くの大きな公園に(従兄弟は『今行ったらめっちゃちっちゃいで』と言っていたけど)毎日のように出掛けた。少し大きめの虫かごにはバッタやてんとう虫やカマキリ、とにかくありとあらゆる昆虫がひしめき合っていた。おもちゃの缶詰みたいに何が出てくる分からない状態だ。いやはや恐ろしい。
カナブンが好きで、マンションなどもよく探索した(階段の踊り場や溝などによくいた)。公園で出会った空を舞うカナブンは石をぶつけて採取した(もはや虫を育てるという気はない)。

ある日、公園で偶然クラスメートと会ったので鬼ごっこをした。滑り台に逃げるクラスメートを追いかけていた時、運悪く足をひっかけた僕は、頭から下に落ちて気絶した。なのに、目を覚ました時にクラスメートがいなかったのを鮮明に覚えている。僕はそのまま救急車で運ばれた。
曖昧な記憶ではあるが、いつも近所でサッカーボールを蹴っていた、ちょっと怖くて僕が避けていた上級生が、僕の家へ行って両親を呼んできてくれたみたいだった。今更ながら、しかもここで言います、ありがとう。
ちなみに恨んでないが、現場からいなくなったクラスメートの名前は今でも鮮明に覚えてる。


・・・続く


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あーちゃん~その1

商店街

これまで僕は祖父母の死に目に会えたことはない。父方の祖父母は物心がつくまえに他界したし、七年前に亡くなった母方の祖父にも会えなかった。そして最後の祖父母である、あーちゃんにも。

昨年の八月四日の朝、あーちゃんは息をひきとった。病気でも事故でもなく、老衰として天寿をまっとうした。九十二歳、大往生だった。
話を進める前に一つ。なぜ、おばあちゃんではなく、あーちゃんなのか。それは実際、僕にもよく分からない。だからこうやって先に‐分からない‐って事を断っておく。もしかすると、あーちゃん自身がおばあちゃんって呼ばれるのを嫌ったのかもしれない。でも僕らはずっと、あーちゃんって呼んでたし、親しみのあるその響きが好きだった。とにかく理由は経緯はともかく、僕らのおばあちゃんは、あーちゃんなんだ。

祖父母と一緒に暮らしたことはないけど、小学生の頃はよく泊まりにいった。同じ市営住宅には母の姉妹の姉と妹の家族がいたし、姉方の息子兄弟や妹方の娘姉妹が暮らしていたから、よく遊んでもらった。なんだかややこしいが、まぁ、とにかくイトコ達と遊んだってことだ。
週末になれば、親から電車賃をもらい、一人で通った。路面電車に乗り、ホームレスで有名な街で地下鉄に乗りかえるという、一時間以上の道のりだった。今の時代の、当時の僕と同じ年頃の子供たちなんて、到底辿り着けないだろう。僕の方向感覚がすぐれてると言いたいとこだが違う。家を出る前に‐危険だ‐と止められるからだ。
この乗り換えの駅は日本でまれにみるホームレス地帯だ。はじめてそこを訪れた人はさぞショックを受けるだろう。タバコをかけて博打をしてるのを見た事がある(戦後みたいだった)。どれだけ寒い冬の日だろうと早朝から空き缶を集めている(もはや普通に働くほうがよっぽど楽だろう)。普通のママチャリで、左右に大量の潰した空き缶をぶらさげ、後ろにエアコンの室外機を積み込み、ぶれることなく安定した走りで荷物を運んでいる姿には、中国雑技団もびっくりだろう。
電気屋の仕事でこの地区に住むお客に洗濯機を配達した時には、店に帰り着くとその洗濯機の空箱からホームレスがでてきたこともある。まさに移動型の家だ(いや、ちゃうやろ)。
電気屋の備品がなくなった次の日には、ドロボウ市(通称)にそれが並ぶという噂も聞いた事があるが、まぁ事実だろう。
今の現状はあまり知らないが、とにかく、そんなところを経由して祖父母の家を目指していたんだからたいしたものだ(僕が、といいたいところだが、僕を送り出す親がだ)。


・・・続く


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チロの見た景色

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『チロの見た景色』


ぶらぶらと歩いて、辿り着くのはいつもここだった。それは今も昔も変わらない。


といっても、来たくて来た、のではなく、犬のチロがここを好きだったんだ。
『もー早く帰ろうよ』という寒い日も、チロはここへ向かう。
散歩の雰囲気を感じては、シッポをブンブン振って喜ぶもんだから、引っ張って帰るのもかわいそうだし、散歩中はたいてい好きにさせてやる。
すると、チロはいつもここへやってくるんだ。よっぽどお気に入りの場所なんだろう。

それにしてもチロはここに来て、一体何を見てるんだろう。この場所に特別何かあるわけでもないのにな。

ただ行儀良くお座りしては、この景色をしばらく眺め、「んーーOK!」という感じで立ち上がり、「かえろー」という表情で、私を見る。

…チロはここが大好きだったんだ。




ぶらぶらと歩いて、辿り着くのはいつもここなんだ。それは今も昔も変わらない。


今、私は1人でこの景色を眺めている。
頻繁に訪れては、しばらくベンチに座って、ぼんやりとチロのことを思い出す。

私はフと思う。

チロにとっても、ここは何かの想い出の場所だったのかもしれないな、と。
そう思うと、私はなんだか居たたまれない気持ちになって、涙が零れた。

『だめだ、帰ろう。お家で泣こう』と思い立ち上がると、突然冷たい風がびゅっと吹き、涙は瞬く間にかき消された。

「泣かなくていいよー」と、チロが言ってるような気がした。

『それなら、温かい風がいいのに』と私は思う。

「また来てね」と言うかのように、小さいつむじ風が舞った。

『また、来るよ』と、私はその小さな風に微笑んだ。





今となっちゃここは、私にとっても特別の場所なんだ。

チロと同じように。




                                        ・・・FIN





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